電網聖書 - Public Domain
章: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
1:1 神の子イエス・キリストに関する福音の始まり。 1:2 預言者たちの中にこう書かれているとおりである。
「見よ,わたしはあなたの面前にわたしの使者を遣わす。
その者はあなたの前に道を整えるだろう。
1:3 荒野で叫ぶ者の声がする,
『主の道を整えよ!
その道筋をまっすぐにせよ!』」
1:4 ヨハネが現われて,荒野でパプテスマを施し,罪の許しのための悔い改めのバプテスマを宣教していた。 1:5 ユダヤの全地方とエルサレムのすべての人々が彼のところに出て来た。人々は自分の罪を告白して,ヨルダン川で彼からバプテスマを受けていた。 1:6 ヨハネはラクダの毛衣を身に着け,皮の帯を腰に巻いており,イナゴと野みつを食べていた。 1:7 彼は宣教して言った,「わたしより強い方がわたしの後から来られる。わたしはかがんでその方のサンダルの革ひもをほどくにも値しない。 1:8 わたしはあなた方に水でバプテスマを施したが,その方はあなた方に聖霊でバプテスマを施すだろう」。
1:9 そのころ,イエスはガリラヤのナザレからやって来て,ヨルダンでヨハネからバプテスマを受けた。 1:10 水から上がってすぐ,天が裂け,霊がハトのように自分の上に下って来るのを目にした。 1:11 天から声がした,「あなたはわたしの愛する子,わたしの心にかなう者である」。
1:12 すぐに霊が彼を荒野に追いやった。 1:13 彼は四十日間荒野にいて,サタンから誘惑を受けた。彼は野獣と共にいて,み使いたちが彼に仕えていた。
1:14 さて,ヨハネが捕まった後,イエスはガリラヤへ行き,神の王国に関する福音を宣教して 1:15 こう言った。「時は満ち,神の王国は近づいた! 悔い改めて福音を信じなさい」。
1:16 ガリラヤの海沿いを通りすがりに,シモンとシモンの兄弟アンデレが海で網を打っているのを目にした。彼らは漁師だったのである。 1:17 イエスは彼らに言った,「わたしの後に付いて来なさい。そうすればあなた方を,人を捕る漁師にしよう」。
1:18 すぐに彼らは網を捨てて彼に従った。 1:19 さらに少し進んで行くと,ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネを目にした。彼らも舟の中で網を繕っていた。 1:20 すぐに彼は彼らを呼んだ。すると彼らは,その父ゼベダイを雇い人たちと共に舟の中に残して,彼の後に付いて行った。 1:21 彼らはカペルナウムに入った。そしてすぐに,彼は安息日に会堂に入って教えた。 1:22 人々は彼の教えに驚いた。彼が権威ある者のように人々を教えていて,律法学者たちのようではなかったからである。 1:23 すぐに,彼らの会堂に汚れた霊に付かれた男がいて,叫んで 1:24 言った,「ほう! ナザレ人イエスよ,わたしたちはあなたと何のかかわりがあるのか。わたしたちを滅ぼしに来たのか。わたしはあなたがだれだか知っている。神の聖なる方だ!」
1:25 イエスは彼をしかりつけて言った,「黙れ。この人から出て行け!」
1:26 汚れた霊は,その人をけいれんさせ,大声で叫びながら,彼から出て行った。 1:27 人々はすっかり驚いたので,互いに論じ合って言った,「これは何事だ。新しい教えなのか。彼は汚れた霊にさえ権威をもって命じる。すると彼らはこの人に従うのだ!」 1:28 彼の評判は,ガリラヤの全地方とその周囲の至る所にすぐに広まった。
1:29 すぐに,彼らは会堂から出ると,ヤコブやヨハネと共に,シモンとアンデレの家に入った。 1:30 さて,シモンのしゅうとめが熱病で横たわっており,彼らはすぐに彼女のことを彼に告げた。 1:31 彼はそばに行き,手を取って彼女を起き上がらせた。熱は引き,彼女は彼らに仕えた。 1:32 夕方,日が沈むと,人々は病気の者や悪霊に取りつかれた者を皆,彼のもとに連れて来た。 1:33 町全体が戸口に集まっていた。 1:34 彼はいろいろな病気にかかっている大勢の人々をいやし,多くの悪霊を追い出した。悪霊たちが語ることを許さなかった。彼らが自分を知っていたからである。
1:35 朝早く,まだ暗いうちに,彼は起き上がって出て行き,寂しい場所へ行って,そこで祈っていた。 1:36 シモンおよび共にいた者たちが後を追って来た。 1:37 そして彼を見つけて,「みんながあなたを探しています」と告げた。
1:38 彼は彼らに言った,「どこかほかの所,近くの町々へ行こう。わたしがそこでも宣教するためだ。わたしはそのために出て来たからだ」。 1:39 ガリラヤ全土にわたり,その会堂に入って,宣教し,悪霊たちを追い出した。
1:40 そこで一人のらい病の人が彼のもとに来て,懇願してひざまずき,「あなたは,もしそうお望みになれば,わたしを清くすることがおできになります」と言った。
1:41 イエスは哀れみに動かされて,手を伸ばして彼に触り,彼に言った,「わたしはそう望む。清くなりなさい」。 1:42 イエスがこう言うと,すぐにらい病は彼から去り,彼は清くなった。 1:43 イエスは彼に厳しく注意して,すぐに彼を送り出した。 1:44 そして彼に言った,「だれにも何も言わないようにしなさい。ただ行って,自分の体を祭司に見せ,自分の清めのためにモーセの命じた物をささげなさい」。
1:45 しかし,彼は出て行くと,それを大いに宣明し,この出来事について言い広め始めた。そのためイエスは,もはやおおっぴらに町に入ることができず,外の寂しい場所にいた。それでも,人々は至る所から彼のもとにやって来た。
2:1 数日後,再びカペルナウムに入ると,彼が家にいることが知れ渡った。 2:2 すぐに大勢の人が集まったので,戸口のあたりにさえ,もう場所がなかった。それで彼は人々にみ言葉を語った。 2:3 四人の人たちが,彼のもとに体のまひした人を運んで来た。 2:4 群衆のために彼のそばに近づくことができなかったので,彼がいる所の屋根を取り除いた。それを解体してしまうと,彼らは体のまひした人が横たわっている寝床を降ろした。 2:5 イエスは彼らの信仰を見て,体のまひした人に言った。「子よ,あなたの罪は許された」。
2:6 ところが,そこに数人の律法学者たちが座っていて,心の中でこう論じていた。 2:7 「なぜこの人はこのような冒とくを語るのか。神おひとりのほか,だれが罪を許せるだろうか」。
2:8 すぐにイエスは,彼らが心の中でこのように論じているのを自分の霊によって気づき,彼らに言った,「なぜあなた方は心の中でこうしたことを論じているのか。 2:9 体のまひした人に,『あなたの罪は許されている』と告げるのと,『起き上がって,寝台を取り上げて歩きなさい』と言うのでは,どちらがたやすいか。 2:10 だが,人の子が地上で罪を許す権威を持っていることをあなた方が知るために」―体のまひした人に言った― 2:11 「あなたに告げる。起き上がって,寝台を取り上げて,自分の家に帰りなさい」。
2:12 その人は起き上がり,すぐに寝床を取り上げて,みんなの前を出て行った。そこで人々はすっかり驚き,「このようなことは今まで見たことがない」と言って,神に栄光をささげた。
2:13 彼は再び海辺に出て行った。群衆が皆,そのもとにやって来た。それで彼は人々を教えた。 2:14 通りすがりに,アルファイオスの子レビが収税所に座っているのを見て,「わたしに従いなさい」と言った。すると彼は立ち上がって,イエスに従った。
2:15 彼の家でイエスが食卓に横になっていたときのことである。大勢の徴税人や罪人が,イエスや弟子たちと共に座っていた。大勢の人がいて,イエスに従っていたからである。 2:16 律法学者たちとファリサイ人たちは,彼が罪人たちや徴税人たちと共に食事をしているのを見て,彼の弟子たちに言った,「なぜ彼は,徴税人たちや罪人たちと共に食べたり飲んだりするのか」。
2:17 イエスはこれを聞いて,彼らに言った,「健康な人たちに医者は必要でなく,病気の人たちに必要なのだ。わたしは義人たちではなく,罪人たちを悔い改めへと呼び寄せるために来た」。
2:18 ヨハネの弟子たちとファリサイ人たちが断食していると,人々はやって来て彼に尋ねた,「ヨハネの弟子たちとファリサイ人の弟子たちは断食するのに,あなたの弟子たちが断食しないのはなぜですか」。
2:19 イエスは彼らに言った,「花婿の付き添い役は,花婿が共にいるのに断食できるだろうか。花婿が共にいる間は,彼らは断食できない。 2:20 だが,花婿が彼らから取り去られる日々が来る。その日には,彼らは断食するだろう。 2:21 縮んでいない布切れを古い衣に縫いつける人はいない。そんなことをすれば,継ぎ切れが縮んで,新しいものが古いものを引き裂き,破れはいっそうひどくなる。 2:22 新しいブドウ酒を古い皮袋に入れる人はいない。そんなことをすれば,新しいブドウ酒は皮袋を破裂させ,ブドウ酒は流れ出て,皮はだめになるだろう。そうではなく,人々は新しいブドウ酒を新しい皮袋に入れるのだ」。
2:23 彼が安息日に穀物畑を通っていたときのこと,彼の弟子たちは進みながら穀物の穂を摘み始めた。 2:24 ファリサイ人たちが彼に言った,「見よ,なぜ彼らは安息日に許されていないことをしているのか」。
2:25 彼は彼らに言った,「ダビデが,自分も共にいた者たちも窮乏して空腹だったときに何をしたか,あなた方は一度も読んだことがないのか。 2:26 アビアタルが大祭司だったときに,彼がどのようにして神の家に入り,祭司たちのほかは食べることが許されていない供えのパンを食べ,共にいた者たちにも与えたかを」。 2:27 彼らに言った,「安息日は人のために作られたのであって,人が安息日のために作られたのではない。 2:28 だから,人の子は安息日の主でもあるのだ」。
3:1 彼は再び会堂に入った。すると,片手のなえた人がそこにいた。 3:2 人々は,安息日にその人をいやすかどうか,彼の様子をうかがっていた。彼を訴えるためであった。 3:3 彼は片手のなえた人に,「立ちなさい」と言った。 3:4 彼らに言った,「安息日に許されているのは,善を行なうことか,悪を行なうことか。命を救うことか,殺すことか」。しかし彼らは黙っていた。 3:5 彼は怒りをもって彼らを見回し,彼らの心のかたくなさを悲しみながら,「あなたの手を伸ばしなさい」とその人に言った。手を伸ばすと,その手はもう一方の手と同じようによくなった。 3:6 ファリサイ人たちは出て行き,すぐにヘロデ党の者たちと,どのようにして彼を滅ぼそうかと,彼に対する陰謀を企てた。
3:7 イエスは弟子たちと共に海に退いた。すると大群衆が彼に従った。すなわち,ガリラヤから,ユダヤから, 3:8 エルサレムから,イドゥマヤから,ヨルダンの向こうから,テュロスやシドンの周辺から来た人々であった。大群衆が,彼の行なった大きな事柄を聞いて,彼のもとに来た。 3:9 彼は弟子たちに,群衆が押し寄せて来ないように,小舟を近くに用意しておくようにと言った。 3:10 というのは,彼が多くの者をいやしたので,病気を持つ人たちが皆,彼に触れようとして押し寄せてきたからである。 3:11 汚れた霊たちは,彼を見るたびに,その前にひれ伏して,「あなたは神の子だ!」と叫んだ。 3:12 彼は,自分を知らせないようにと,彼らを厳しく戒めた。
3:13 彼は山に上り,自分の望む者たちを呼び寄せた。すると彼らは彼のもとにやって来た。 3:14 彼は十二人を任命した。それは,彼らが自分と共にいるためであり,また,彼らを遣わして宣教させ, 3:15 病気をいやして悪霊たちを追い出す権限を持たせるためであった。すなわち, 3:16 彼がペトロという名を与えたシモン, 3:17 ゼベダイの子ヤコブとヤコブの兄弟ヨハネ(彼らにはボアネルゲスという異名を付けた。これは雷の子らという意味である), 3:18 アンデレ,フィリポ,バルトロマイ,マタイ,トマス,アルファイオスの子ヤコブ,タダイオス,熱心党のシモン, 3:19 それに,ユダ・イスカリオト。このユダはまた,彼を売り渡した者でもある。
彼は家に入った。 3:20 群衆が再び集まって来たので,彼らはパンを食べることさえできなかった。 3:21 彼の友人たちはこれを聞くと,彼を捕まえにやって来た。というのは,人々が「彼は気が狂っている」と言っていたからである。 3:22 エルサレムから下って来た律法学者たちは,「彼はベエルゼブルに取りつかれている」とか,「悪霊たちの首領によって悪霊たちを追い出している」などと言っていた。
3:23 彼は彼らを呼び寄せ,たとえで彼らに語った,「どうしてサタンがサタンを追い出せるのか。 3:24 もし王国が自らに敵対して分裂するなら,その王国は立ち行けるはずがない。 3:25 もし家が自らに敵対して分裂するなら,その家は立ち行けるはずがない。 3:26 もしサタンが自らに敵対して立ち上がって分裂するなら,彼は立ち行けるはずがなく,終わりを迎えてしまう。 3:27 さらに,まず強い者を縛ってからでなければ,だれも強い者の家に押し入って略奪することはできない。縛ってから,その家を略奪するだろう。 3:28 本当にはっきりとあなた方に告げる。人の子らは,冒とくするとしても,その冒とくを含め,あらゆる罪が許されるだろう。 3:29 だが,だれでも聖霊に対して冒とくする者は決して許しを得ず,永遠の罪の責めを負う」。 3:30 ―これは,彼らが,「彼は汚れた霊に取りつかれている」と言っていたためである。
3:31 彼の母と兄弟たちがやって来た。そして外に立ち,人を遣わして彼を呼ばせた。 3:32 群衆が彼の周りに座っていて,彼に告げた,「ご覧なさい,あなたのお母さんと兄弟たちと姉妹たちが外であなたを探しています」。
3:33 彼は彼らに答えた,「わたしの母,またわたしの兄弟たちとはだれか」。 3:34 自分の周りに座っている人々を見回して言った,「見よ,わたしの母とわたしの兄弟たちだ! 3:35 だれでも神のご意志を行なう者,その者がわたしの兄弟,また姉妹,また母なのだ」。
4:1 彼は再び海辺で教え始めた。大群衆が彼のもとに集まって来た。そのため彼は,海上の舟の中に入って座った。群衆は皆,海辺の陸地にいた。 4:2 彼はたとえを用いて多くの事を教え,自分の教えの中で人々に言った, 4:3 「聞きなさい! 見よ,ある耕作人が種をまきに出かけた。 4:4 そして,種をまいているときのこと,ある種は道ばたに落ち,*鳥たちがやって来て,それをむさぼり食ってしまった。 4:5 別の種は土の少ない岩地の上に落ちた。そして,土が深くなかったので,すぐに芽を出した。 4:6 太陽が昇ると焦がされ,根がないために枯れ果ててしまった。 4:7 別の種はイバラの間に落ち,イバラが伸びて来てそれをふさぎ,それは実を生じなかった。 4:8 それ以外の種は良い土に落ち,成長して大きくなり,実を生じた。あるものは三十倍,あるものは六十倍,あるものは百倍もの実を生み出した」。 4:9 彼は言った,「だれでも聞く耳のある者は聞きなさい」。
4:10 彼がひとりになった時,十二人と共に彼の周りにいた者たちは,このたとえについて彼に尋ねた。 4:11 彼は彼らに言った,「あなた方には神の王国の秘密が与えられているが,外にいる者たちにはすべての事がたとえで与えられる。 4:12 それは,『彼らが見るには見るが分からず,聞くには聞くが理解せず,何かの拍子に立ち返って,その罪が許されることのないため』だ」。
4:13 彼らに言った,「あなた方はこのたとえが理解できないのか。どのようにしてほかのすべてのたとえを理解するつもりなのか。 4:14 耕作人はみ言葉をまくのだ。 4:15 道ばたにみ言葉がまかれたものとは,こういう人たちのことだ。彼らが聞くと,すぐにサタンがやって来て,彼らの内にまかれたみ言葉を取り去るのだ。 4:16 同じように,岩地の上にまかれたものとは,こういう人たちのことだ。み言葉を聞くと,喜んですぐに受け入れる。 4:17 自分の内に根がないので,短命だ。み言葉のために圧迫や迫害が生じると,すぐにつまずく。 4:18 イバラの間にまかれたものとは,別の者たちのことだ。これはみ言葉を聞いた人たちだが, 4:19 この時代の思い煩いや,富の欺きや,ほかの物事に関する欲望が入り込んでみ言葉をふさぎ,それは実を結ばなくなる。 4:20 良い土の上にまかれたものとは,こういう人たちのことだ。み言葉を聞いて受け入れ,ある者は三十倍,ある者は六十倍,ある者は百倍の実を結ぶのだ」。
4:21 彼らに言った,「ともし火が持って来られるのは,かごの下や寝台の下に置かれるためだろうか。燭台の上に置かれるためではないか。 4:22 というのは,知られるためでないのに隠されているものはなく,明るみに出るためでないのに秘密にされているものはないからだ。 4:23 だれでも聞く耳のある者は聞きなさい」。
4:24 彼らに言った,「自分が聞いていることに注意を払いなさい。あなた方が量るそのはかりで,あなた方に量られるだろう。そして,聞いている者にはさらに与えられるだろう。 4:25 持っている者にはさらに与えられ,持っていない者からは持っているものまでも取り去られることになるからだ」。
4:26 彼は言った,「神の王国は次のようなものだ。人が地に種をまき, 4:27 夜昼,寝起きしているうちに,種は芽が出て成長する。どのようにしてかを彼は知らない。 4:28 地が実を生み出すのであって,最初に葉,それから穂,それから豊かな穀粒を生み出すからだ。 4:29 しかし,実が熟するとすぐに彼はかまを入れる。収穫の時が来たからだ」。
4:30 彼は言った,「わたしたちは,神の王国をどのようにたとえようか。あるいは,どんなたとえで説明しようか。 4:31 それは一粒のからしの種のようなものだ。それは,地にまかれる時は地上のあらゆる種よりも小さい。 4:32 だがいったんまかれると,成長し,あらゆる草よりも大きくなり,大きな枝を張り,その陰で空の鳥たちが巣を作れるほどになる」。
4:33 彼は,人々の聞くことができる程度に応じて,このようなたとえを多く用いてみ言葉を語った。 4:34 たとえなしでは人々に語らなかった。しかし,弟子たちに対しては,ひそかにすべてのことを説明した。
4:35 その日,夕方になった時,彼は彼らに「向こう岸に渡ろう」と言った。 4:36 彼らは,群衆を残して,舟に乗っているままで彼を連れて行った。他の小舟も彼と共にいた。 4:37 激しい風あらしが起こり,波が舟の中に打ちつけて,舟はもはや水でいっぱいになるほどであった。 4:38 彼自身は船尾にいて,まくらをして眠っていた。そこで彼らは彼を起こして告げた,「先生,わたしたちが死にかかっていても平気なのですか」。
4:39 彼は目を覚まし,風をしかりつけ,海に言った,「静まれ! 静かになれ!」 風はやみ,大なぎになった。 4:40 彼は彼らに言った,「なぜそんなに恐れるのか。信仰がないのはどうしてか」。
4:41 彼らは非常に恐れて,互いに言い合った,「風や海さえも従うとは,いったいこの方はどなただろう」。
5:1 彼らは海の向こう岸に着き,ゲラサ人たちの地方に入った。 5:2 彼が舟から出て来ると,すぐに汚れた霊に取りつかれた男が墓場から出て来て彼に出会った。 5:3 この男は墓場を住みかとしていた。もはやだれも,鎖を用いてさえ彼を縛ることができなかった。 5:4 彼はよく足かせや鎖で縛られたが,鎖はばらばらに引きちぎられ,足かせはばらばらに壊されてしまったからである。だれも彼を従わせる力を持っていなかった。 5:5 彼は,夜昼となく,墓場や山の中で叫んだり,石で身を切りつけたりしていた。 5:6 彼は,遠くからイエスを見ると,走って来ておじぎをし, 5:7 そして大声で叫んで言った,「いと高き神の子イエスよ,わたしはあなたと何のかかわりがあるのか。神にかけてお願いする,わたしを苦しめないでくれ」。 5:8 というのは,イエスは彼に,「汚れた霊よ,この人から出て行け!」と言ったからである。
5:9 イエスは彼に尋ねた,「あなたの名前は何か」。
彼はイエスに言った,「わたしの名前はレギオンだ。わたしたちは大勢だからだ」。 5:10 彼はイエスに,自分たちをこの地方の外に追い払わないようにと,しきりに懇願した。 5:11 ところで,その山腹で豚の大群が飼われていた。 5:12 悪霊たちは皆,彼に懇願して言った,「わたしたちをあの豚たちの中に送って,あの中に入れるようにしてくれ」。
5:13 すぐにイエスは彼らに許可を与えた。汚れた霊たちは出て行って豚たちの中に入った。二千匹ほどのその群れは,険しい土手を下って海に突進し,海でおぼれ死んだ。 5:14 飼っていた者たちは逃げて行き,その町とその地方でそのことを知らせた。
人々は,何が起きたのか見に来た。 5:15 彼らはイエスのもとに来て,悪霊たちに取りつかれていた人,レギオンを宿していた人が服を着て,正気で座っているのを見た。それで彼らは恐れた。 5:16 見ていた者たちは,悪霊たちに取りつかれていた人にそのことがどのように起こったか,また豚たちについて,彼らに知らせた。 5:17 彼らは自分たちの地域から去るようにとイエスに懇願し始めた。
5:18 彼が舟に乗り込んでいると,悪霊たちに取りつかれていた人が,共にいさせて欲しいと懇願した。 5:19 イエスはそれを許さず,彼に言った,「あなたの家,あなたの友人たちのところに帰り,主があなたのためにどんな大きな事柄をしてくださったか,またあなたにどれほどあわれみを抱いてくださったかを知らせなさい」。
5:20 彼は立ち去り,イエスが彼のためにどのように大きな事柄を行なったかをデカポリスで宣明し始めた。それでみんなは驚嘆した。
5:21 イエスが舟でまた向こう岸に渡ると,大群衆がそのもとに集まった。彼は海辺にいた。 5:22 見よ,会堂長の一人でヤイロスという名の者が来て,彼を見ると足もとにひれ伏し, 5:23 しきりに懇願して言った,「わたしの小さな娘が死にかかっています。健康になって生きられるよう,どうかおいでになって,娘の上にあなたの手を置いてください」。
5:24 イエスは彼と共に行った。すると大群衆も彼に従い,四方八方から彼に押し迫った。 5:25 十二年間も血の流出をわずらっている女がいた。 5:26 多くの医者にさんざん苦しめられ,持っていたものをすべて使い果たしてしまったが,良くなるどころか,いっそう悪くなった。 5:27 その女が,イエスに関する事柄を聞いて,群衆の中で彼の後ろに近づき,その衣に触った。 5:28 というのは,彼女は,「あの方の衣に触りさえすれば,わたしはよくなるだろう」と言っていたからである。 5:29 すぐに彼女の血の流れは乾き,彼女は自分が苦しみからいやされたことを体の内で感じた。
5:30 すぐにイエスは,自分から力が出て行ったことを自分の内で気づき,群衆の中で振り向いて,「わたしの衣に触ったのはだれか」と尋ねた。
5:31 弟子たちは彼に言った,「群衆があなたに対して押し寄せているのを見ておられるのに,『だれが触ったか』と言われるのですか」。
5:32 彼はこの事をした女を見ようと,あたりを見回していた。 5:33 一方その女は,自分に起こったことを知り,恐れて震えながら,やって来て彼の前にひれ伏し,すべてをありのままに彼に話した。
5:34 彼は彼女に言った,「娘よ,あなたの信仰があなたをよくならせた。平安のうちに行きなさい。あなたの病気からいやされなさい」。
5:35 彼がまだ話しているうちに,会堂長の家から人々が来て言った,「あなたの娘さんは亡くなりました。どうして先生をこれ以上煩わすのでしょうか」。
5:36 しかしイエスは,話されている言葉を聞くと,すぐに会堂長に言った,「恐れることはない。ただ信じなさい」。 5:37 ペトロとヤコブおよびヤコブの兄弟ヨハネのほかは,だれも自分に付いて来ることを許さなかった。 5:38 彼は会堂長の家に着いた。そして,泣いたり,大声で泣きわめいたりする騒ぎを目にした。 5:39 中に入って,彼らに言った, 「なぜ騒いだり泣いたりしているのか。子供は死んだのではなく,眠っているのだ」。
5:40 人々は彼をばかにした。しかし彼は,みんなを外に出し,その子供の父と母および自分と共にいた者たちを連れて,子供が横たわっている所に入って行った。 5:41 子供の手を取って,「タリタ,クム」と言った。これは訳せば,「少女よ,あなたに告げる,起きなさい」という意味である。 5:42 すると少女は立ち上がり,歩き出した。彼女は十二歳だったからである。彼らは大きな驚きと共に驚いた。 5:43 彼は,このことをだれにも知らせないようにと厳しく彼らに命じた。そして,彼女に何か食べる物を与えるようにと命じた。
6:1 そこから出発して,彼は自分の故郷に入った。弟子たちも彼に従った。 6:2 安息日になると,彼は会堂で教え始めた。耳を傾けた大勢の人は驚いてこう言った。「この人はこうした事柄をどこから得たのだろう」。また,「この人に与えられた知恵はいったい何だ。このような強力な業が彼の手によって生じるのはどうしたことだ。 6:3 この人は大工ではないか。マリアの息子で,ヤコブ,ヨセ,ユダ,シモンの兄弟ではないか。その姉妹たちは我々と共にここにいるではないか」。人々は彼のために不快になった。
6:4 イエスは彼らに言った,「預言者は,自分の故郷や親族の間また自分の家以外では,敬われないことはない」。 6:5 その場所では一つも強力な業を行なうことができず,ただ少数の病気の人たちの上に手を置いていやしただけであった。 6:6 彼は彼らの不信仰のために驚き怪しんだ。
彼は村々を巡回して教えた。 6:7 十二人を呼び寄せて,彼らを二人ずつ遣わし始め,彼らに汚れた霊たちに対する権威を与えた。 6:8 彼らに,旅のためにつえ一本のほかは何も持って行かないようにと命じた。すなわち,パンも,袋も,財布の中のお金も持たず, 6:9 ただサンダルを履くだけで,二枚の上着を身に着けないようにと命じた。 6:10 彼らに言った, 「どこでも家に入ったなら,そこから出発するまではそこにとどまりなさい。 6:11 だれかがあなた方を受け入れず,あなた方の言うことに耳を傾けないなら,そこから出発する時に,彼らに対する証言のため,足の裏のちりを払い落としなさい。はっきりとあなた方に告げる。裁きの日には,ソドムとゴモラのほうがその町よりは耐えやすいだろう」。
6:12 彼らは出て行って,人々が悔い改めるために宣教した。 6:13 彼らは多くの悪霊を追い出し,大勢の病気の人に油を塗って,その者たちををいやした。 6:14 ヘロデ王がこのことを聞いた。イエスの名前が広く知られるようになっていたからである。それで彼は言った,「バプテスマを施す人ヨハネが死んだ者たちの中から生き返ったので,こうした力が彼の内に働いているのだ」。 6:15 しかし他の者たちは,「この人はエリヤだ」と言った。他の者たちは,「預言者たちの一人のような預言者だ」と言った。 6:16 しかしヘロデはこのことを聞いて言った,「これは,わたしが首をはねたヨハネだ。彼は死んだ者たちの中から生き返ったのだ」。 6:17 というのは,ヘロデ自身が,自分の兄弟フィリポの妻ヘロディアのために,人を遣わして,ヨハネを逮捕し,ろうやにつないだからであった。それは,彼が彼女と結婚していたからである。 6:18 ヨハネはヘロデに,「あなたが自分の兄弟の妻を有しているのは,許されることではない」と言ったのである。 6:19 ヘロディアは彼に敵対し,彼を殺すことを望んだが,できなかった。 6:20 それはヘロデが,ヨハネが正しい聖なる人であることを知っていて,彼を恐れ,保護したからである。彼の言うことに耳を傾ける時,ヘロデは多くの事をしていたが,喜んで彼の言うことに耳を傾けていた。
6:21 すると,都合の良い日がやって来た。ヘロデが自分の誕生日に,自分の高官たちや将校たちやガリラヤの主立った人たちのために夕食を用意した。 6:22 ほかでもないヘロディアの娘が入って来て,踊り,ヘロデや彼と共に座っていた者たちを喜ばせた。王は乙女に言った,「何でも欲しいものを求めなさい。わたしはそれをお前に与えよう」。 6:23 彼女に誓った,「お前がわたしに求めるものは何でも,わたしの王国の半分まででも,わたしはお前に与えよう」。
6:24 彼女は出て行って,自分の母に言った,「わたしは何を求めましょうか」。
母は言った,「バプテスマを施す人ヨハネの首を」。
6:25 彼女はすぐに急いで王のところに入って,こう求めた。「今すぐに,バプテスマを施す人ヨハネの首を大皿に載せて,わたしに与えてくださいますように」。
6:26 王は非常に残念に思ったが,自分の誓い,また祝宴の招待客のゆえに,彼女の言うことを拒もうとは思わなかった。 6:27 すぐに王は自分の護衛兵を遣わして,ヨハネの首を持って来るように命じた。そこで護衛兵は出て行き,ろうやで彼の首をはねた。 6:28 そして,大皿に彼の首を載せて持って来て,それを乙女に与え,乙女はそれを自分の母に渡した。
6:29 ヨハネの弟子たちはこのことを聞くと,やって来て彼の死体を引き取り,それを墓の中に横たえた。
6:30 使徒たちはイエスのもとに集まり合った。そして彼に,自分たちが行ない,また教えた事柄をすべて告げた。 6:31 彼は彼らに言った,「あなた方だけで寂しい場所に行き,しばらく休息しなさい」。というのは,出入りする者が多く,食事をとる暇もなかったからである。 6:32 彼らは舟に乗って,自分たちだけで寂しい場所へ出発した。 6:33 人々は彼らが去って行くのを目にし,大勢の人がそれと分かったので,すべての町からそこへ徒歩で駆けつけた。人々は彼らより先に着き,いっせいに彼のもとに来た。 6:34 イエスは出て来て,大群衆を目にし,彼らが羊飼いのいない羊のようだったので,彼らに対して哀れみを抱き,彼らに多くの事柄を教え始めた。 6:35 時刻も遅くなった時,弟子たちが彼のもとに来て,こう言った。「ここは寂しい場所ですし,時刻も遅くなっています。 6:36 彼らを去らせて,彼らが周りの里や村々に入り,自分たちでパンを買うようにさせてください。彼らには食べ物が何もないからです」。
6:37 しかし彼は彼らに答えた,「あなた方が彼らに食べ物を与えなさい」。
彼らは彼に尋ねた,「わたしたちが出かけて行って,二百デナリ分のパンを買い,彼らに食べ物を与えるのですか」。
6:38 彼は彼らに言った,「あなた方はパンを幾つ持っているのか。行って見て来なさい」。
彼らは確かめて来て,言った,「五つです。それに魚が二匹」。
6:39 彼は彼らに,みんなを組にして青草の上に座らせるように命じた。 6:40 人々は,五十人ずつ,また百人ずつまとまって座った。 6:41 彼は五つのパンと二匹の魚を取り,天を見上げ,祝福してからパンを裂き,弟子たちに渡して人々の前に置かせた。また,二匹の魚をみんなの間で分けた。 6:42 みんなは食べて満ち足りた。 6:43 彼らはパン切れや魚を,十二のかごいっぱいに拾い集めた。 6:44 パンを食べたのは*五千人の男たちであった。
6:45 すぐに彼は,弟子たちを舟に乗り込ませ,向こう岸のベツサイダへ先に行かせ,その間に自分は群衆を去らせた。 6:46 人々に別れを告げてから,祈るために山へ上った。
6:47 夕方になった時,舟は海の真ん中にあり,彼はひとりで陸にいた。 6:48 風が彼らに逆らっているために,彼らがこぎ悩んでいるのを見ると,夜の第四時ごろ,海の上を歩いて彼らに近づき,そのそばを通り過ぎようとした。 6:49 しかし彼らは,彼が海の上を歩いているのを見て,幽霊だと思い,叫び声を上げた。 6:50 というのは,みんなが彼を目にして,動転したからである。しかし,彼はすぐに彼らに語りかけ,彼らに言った,「しっかりしなさい。これはわたしだ! 恐れることはない」。 6:51 彼が彼らと共に舟に乗り込むと,風はやんだ。それで彼らは互いに非常に驚き,また不思議に思った。 6:52 それは,彼らがパンの出来事について理解しておらず,その心がかたくなだったからである。
6:53 彼らは海を渡り,ゲネサレトの地に着き,岸に舟をつないだ。 6:54 彼らが舟から出て来ると,すぐに人々は彼だと分かった。 6:55 そして人々は,その地方全体を走り回り,病気の人たちを寝台に載せて,彼がいると聞いた所へ運び始めた。 6:56 村でも町でも里でも,彼が入った所ではどこでも,人々は病気の者たちを市場に横たえ,その者たちにその衣の房べりにでも触らせてもらえるよう,彼に懇願した。そして彼に触った者は皆良くなった。
7:1 それから,ファリサイ人たちと数人の律法学者たちが,エルサレムからやって来て,彼のもとに集まった。 7:2 さて,彼らは,弟子たちのうちのある者たちが,汚れた手,つまり洗っていない手でパンを食べているのを目にして,非難した。 7:3 (というのは,ファリサイ人たち,つまりすべてのユダヤ人たちは,年長者たちの伝統を守って,手と腕を洗わなければ食事をしないからである。 7:4 彼らは市場から帰って来ると,水を浴びなければ食事をしない。そして,彼らが受け継いでいる事柄は,杯や水差しや銅器や寝いすを洗うことなど,他にもたくさんある。) 7:5 ファリサイ人たちと律法学者たちは彼に尋ねた,「あなたの弟子たちが年長者たちの伝統によって歩まず,洗っていない手でパンを食べるのはなぜか」。
7:6 彼は彼らに答えた,「イザヤは,あなた方偽善者たちについてみごとに預言した。こう書いてあるとおりだ。
『この民は唇でわたしを敬うが,
7:7 彼らがわたしを崇拝するのは無駄なことだ,
7:8 「あなた方は神のおきてを無視して,人間の伝統を堅く守っている。水差しや杯を洗うことなど,そういった事柄を他にもたくさん行なっているのだ」
その心はわたしから遠く離れている。
人間のおきてを教理として教えているからだ』。
7:14 群衆を皆,自分のところに呼び寄せて,彼らに言った,「あなた方は皆,わたしの言うことを聞いて,理解しなさい。 7:15 人の外から入って来るもので,彼を汚すことができるものは何もないが,人から出て行くものが人を汚すのだ。 7:16 聞く耳のある者は聞きなさい!」
7:17 彼が群衆から離れて家の中に入ると,弟子たちはこのたとえについて彼に尋ねた。 7:18 彼は彼らに言った,「あなた方も,これほどまでに理解力がないのか。すべて外から人の中に入るものは,彼を汚すことができないということが分からないのか。 7:19 それは彼の心の中に入るのではなく,腹の中に入って,便所に入り,こうして,すべての食物は清くされるからだ」。 7:20 彼は言った,「人から出て行くもの,それがその人を汚す。 7:21 というのは,内部から,人の心の中から,これらのものが出て行くからだ。すなわち,悪い考え,姦淫
7:24 そこから立って,テュロスとシドンの地方へ去って行った。ある家の中に入り,だれにもそのことを知られないようにと望んだが,気が付かれないでいることはできなかった。 7:25 それどころか,汚れた霊に付かれた小さな娘を持つある女が,彼のことを聞きつけ,やって来てその足もとにひれ伏した。 7:26 ところで,この女はギリシャ人で,人種ではシリア・フェニキア人であった。彼女は自分の娘から悪霊を追い出してくれるように懇願した。 7:27 しかしイエスは彼女に言った,「まず子供たちを満ち足らせなさい。子供たちのパンを取って犬たちに投げ与えるのはふさわしくないからだ」。
7:28 しかし彼女は彼に答えた,「そうです,主よ。でも,食卓の下の犬たちでさえ,子供たちのパンくずを食べるのです」。
7:29 彼は彼女に言った,「その言葉のゆえに,帰りなさい。悪霊はあなたの娘から出て行った」。
7:30 彼女は自分の家に去って行き,子供が寝台の上で横になっており,悪霊が出て行ってしまっているのを見た。
7:31 再び,彼はテュロスとシドンの地方から出発し,デカポリス地域の真ん中を通って,ガリラヤの海に来た。 7:32 人々は,耳が聞こえず言語障害のある人を彼のもとに連れて来た。人々は,その人の上に手を置いてくれるようにと懇願した。 7:33 イエスは,彼を群衆から離して一人にし,その両耳に自分の指を差し入れ,つばをかけて彼の舌に触った。 7:34 天を見上げて嘆息し,彼に向かって,「エッファタ!」,つまり「開かれよ!」と言った。 7:35 すぐにその両耳は開かれ,舌のもつれも解かれて,彼ははっきりと話し出した。 7:36 イエスは,だれにも知らせないようにと人々に命じたが,命じれば命じるほど,彼らはいっそう広くそのことを宣明した。 7:37 彼らはすっかり驚いて言った,「彼はすべての事を上手に行なった。耳の聞こえない人を聞こえるように,また口のきけない人を話せるようにさえするのだ!」
8:1 そのころ,非常に大群衆が集まっていて,食べる物を何も持っていなかった時,イエスは弟子たちを自分のところに呼び寄せて,彼らに言った, 8:2 「わたしは群衆に対して哀れみを抱く。彼らはもう三日もわたしと共にいるのに,食べる物を何も持っていないからだ。 8:3 もし彼らを空腹のまま家に帰らせたら,途中で気を失ってしまうだろう。彼らの中には遠くから来ている人もいるからだ」。
8:4 弟子たちは彼に答えた,「こんな寂しい場所で,どこからパンを手に入れて,これらの人々を満足させることができるでしょうか」。
8:5 彼は彼らに言った,「あなた方はパンを幾つ持っているのか」。
彼らは言った,「七つです」。
8:6 彼は地面に座るよう群衆に命じ,七つのパンを取った。感謝をささげてからそれを裂き,人々に配らせるためにそれを弟子たちに与え,弟子たちが群衆に配った。 8:7 彼らは小さな魚を幾らか持っていた。彼はそれを祝福してから,それをも配るようにと言った。 8:8 人々は食べて満ち足りた。彼らは余ったパン切れを七つのかごに拾い集めた。 8:9 食べたのはおよそ四千人の者たちであった。それから彼は人々を去らせた。
8:10 すぐに彼は弟子たちと共に舟に乗り,ダルマヌタ地域に入った。 8:11 ファリサイ人たちが出て来て,彼に質問し始めた。天からのしるしを彼に求め,彼を試そうとしてであった。 8:12 彼は自分の霊において深く嘆息して言った,「どうしてこの世代はしるしを求めるのか。本当にはっきりとあなた方に告げるが,この世代には何のしるしも与えられないだろう」。
8:13 彼らを残して,再び舟に乗り,向こう岸へ去って行った。 8:14 弟子たちはパンを持って来るのを忘れたので,一つのパンのほかには,何も舟の中に持っていなかった。 8:15 彼は彼らに命じて言った,「このことを思いに留めなさい。すなわち,ファリサイ人たちのパン種とヘロデのパン種とに用心しなさい」。
8:16 彼らは互いに論じ合って言った,「これは,我々がパンを持っていないからだ」。
8:17 それに気づいて,イエスは彼らに言った,「なぜあなた方はパンを持っていないことについて論じているのか。まだ気づかず,理解しないのか。あなた方の心はなおもかたくななのか。 8:18 目があっても見えないのか。耳があっても聞こえないのか。あなた方は覚えていないのか。 8:19 わたしが五千人の間で五つのパンを裂いた時,あなた方はパン切れでいっぱいになったかごを幾つ集めたか」。
彼らは彼に告げた,「十二です」。
8:20 「七つのパンを四千人に与えた時,あなた方はパン切れでいっぱいになったかごを幾つ集めたか」。
彼らは彼に告げた,「七つです」。
8:21 彼は彼らに尋ねた,「あなた方はまだ理解しないのか」。
8:22 彼はベツサイダに着いた。人々が盲人を彼のもとに連れて来て,触ってくれるよう懇願した。 8:23 盲人の手を取り,村の外に連れ出した。彼の両目につばをかけ,両手を彼の上に置いて,何か見えるかと尋ねた。
8:24 目を上げて言った,「人が見えます。木のようなものが歩き回っているのが見えるからです」。
8:25 すると,両手を再び彼の両目に当てた。彼は一心に見つめているうちに,回復させられ,すべてのものがはっきりと見えるようになった。 8:26 彼を家に去らせてこう言った。「村に入ったり,村のだれかに知らせたりしてはいけない」。
8:27 イエスは弟子たちと共に,カエサレア・フィリピの村々に出発した。その途中で,彼は弟子たちに尋ねた,「人々はわたしをだれだと言っているか」。
8:28 彼らは彼に告げた,「バプテスマを施す人ヨハネ,またほかの者たちはエリヤと言い,さらにほかの者たちは預言者たちの一人だと言っています」。
8:29 彼は彼らに言った,「だが,あなた方はわたしをだれだと言うのか」。
ペトロが答えた,「あなたはキリストです」。
8:30 彼は,自分のことをだれにも告げないようにと彼らに命じた。 8:31 そして,人の子が多くの苦しみを受け,長老たちや祭司長たちや律法学者たちから拒まれ,かつ殺され,そして三日後に生き返らなければならないことを,彼らに教え始めた。 8:32 彼は彼らに包み隠さずに語った。ペトロは彼をわきに連れて行ってしかり始めた。 8:33 しかし,彼は背を向け,弟子たちを見ながら,ペトロをしかって言った,「サタンよ,わたしの後ろに下がれ! あなたは神の物事ではなく,人間の物事を考えているからだ」。
8:34 群衆を弟子たちと共に自分のところに呼び寄せて,彼らに言った,「だれでもわたしに付いて来たいと思うなら,その人は自分を否定し,自分の十字架を取り上げて,わたしに従いなさい。 8:35 自分の命を救おうと思う者はそれを失うことになり,わたしと福音のために自分の命を失う者はそれを救うことになるからだ。 8:36 人が全世界を手に入れても,それによって自分の命を失うなら,何の益になるだろうか。 8:37 人は自分の命と引き換えにいったい何を支払うというのか。 8:38 この邪悪な姦淫
9:1 彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。ここに立っている者の中には,神の王国が力をもって来るのを見るまでは決して死を味わわない者たちがいる」。
9:2 六日後,イエスはペトロとヤコブとヨハネを伴い,高い山に彼らだけを連れ上った。すると,彼らの目の前で彼の姿が変えられた。 9:3 その衣は雪のように真っ白に光り輝き,地上のどんな洗濯人にもそこまで白くすることはできないほどになった。 9:4 エリヤとモーセが彼らに現われて,イエスと語り合っていた。
9:5 ペトロがイエスに答えた,「ラビ,わたしたちがここにいるのは良いことです。幕屋を三つ作りましょう。一つはあなたのため,一つはモーセのため,一つはエリヤのためです」。 9:6 実のところ,彼は何と言っていいか分からなかったのである。彼らは非常に恐れていたからである。
9:7 雲が起こって彼らを影で覆い,その雲から声がした,「これはわたしの愛する子である。この者に聞き従いなさい」。
9:8 彼らが不意にあたりを見回すと,ただイエスのほかは,もうだれも自分たちのもとには見えなかった。
9:9 彼らが山を下りて行く時,彼は彼らに,人の子が死んだ者たちの中から生き返った後になるまでは,目にした事柄をだれにも告げないようにと命じた。 9:10 彼らはこの言葉を心に留め,「死んだ者たちの中から生き返る」とはどういう意味かと論じ合った。
9:11 彼らは彼に尋ねて言った,「なぜ律法学者たちは,まずエリヤが来なければならないと言うのですか」。
9:12 彼は彼らに言った,「確かにまずエリヤが来て,すべてのものを回復する。それなら,人の子について,彼が多くの苦しみを受け,さげすまれると書いてあるのはどうしてか。 9:13 だが,あなた方に告げる。エリヤはすでに来たのだ。そして人々は,彼について書いてあるとおりに,したい放題のことを彼に対しても行なったのだ」。
9:14 彼が弟子たちのところに来ると,大群衆が彼らの周りにおり,律法学者たちが彼らと論じ合っているのを目にした。 9:15 すぐに,群衆は皆,彼を見て大いに驚き,走り寄って来て彼にあいさつしようとした。 9:16 彼は律法学者たちに尋ねた,「彼らに何を尋ねているのか」。
9:17 群衆の一人が答えた,「先生,わたしは自分の息子をあなたのもとに連れて来ました。息子は口のきけない霊に取りつかれています。 9:18 そして,それが彼に取りつくと,どこででも彼を引き倒すので,彼は口から泡を吹き,歯ぎしりして,弱り衰えてしまいます。わたしは,あなたの弟子たちにそれを追い出してくれるよう願いましたが,彼らにはできませんでした」。
9:19 彼は彼らに言った,「不信仰な世代よ,いつまでわたしはあなた方と一緒にいようか。いつまであなた方のことを我慢しようか。その子をわたしのところに連れて来なさい」。
9:20 人々はその子を彼のもとに連れて来た。そして彼を見ると,すぐにその霊はその子をけいれんさせたので,その子は地面に倒れ,泡を吹きながら転げ回った。
9:21 彼はその子の父親に尋ねた,「この子にこうした事が起こってから,もうどれくらいになるのか」。
父親は言った,「幼い時からです。 9:22 この霊は息子を滅ぼそうとして,何度も火や水の中に投げ入れました。ですが,もし何かおできになるなら,わたしたちを哀れんでお助けください」。
9:23 イエスは彼に言った,「あなたが信じることができるなら,信じる者にはすべての事が起こり得るのだ」。
9:24 すぐに,その子の父親は涙ながらに叫んで言った,「信じます。わたしの不信仰をお助けください!」
9:25 イエスは,群衆が一緒になって走り寄って来るのを見ると,汚れた霊をしかりつけて,彼に言った,「口がきけず,耳の聞こえない霊よ,あなたに命じる。その子から出て来て,二度と入るな!」
9:26 その霊は,大声を上げ,ひどくけいれんさせながら,彼から出て来た。その少年は死んだ者のようになったので,大半の人たちは,「彼は死んだ」と言った。 9:27 しかし,イエスが彼の手を取って起こすと,彼は起き上がった。
9:28 彼が家に入った時,弟子たちはひそかに彼に尋ねた,「なぜわたしたちはあの霊を追い出せなかったのでしょうか」。 9:29 彼は彼らに言った,「この種のものは,祈りと断食によらなければ,どうしても出て行かせることはできない」。
9:30 彼らはそこから出て,ガリラヤを通り抜けた。彼はそのことをだれにも知られることを望まなかった。 9:31 というのは,弟子たちを教えて,彼らに言っていたからである,「人の子は人々の手に引き渡され,人々は彼を殺すだろう。そして彼は殺されて三日後に生き返るだろう」。
9:32 しかし彼らはこの言葉を理解せず,また彼に尋ねるのを恐れていた。
9:33 彼はカペルナウムにやって来た。家の中にいた時,彼らに尋ねた,「あなた方は途中で何を議論していたのか」。
9:34 しかし彼らは黙っていた。途中で,だれが一番偉いかについて互いに論争していたからである。
9:35 彼は座って十二人を呼び,彼らに言った,「第一でありたいと思うなら,その人はみんなの最後となり,みんなの召使いとなりなさい」。 9:36 幼子を連れて来て,彼らの真ん中に座らせ,また両腕に抱きかかえながら,彼らに言った, 9:37 「わたしの名のゆえにこのような幼子の一人を受け入れる者は,わたしを受け入れるのだ。そして,わたしを受け入れる者は,わたしではなく,わたしを遣わした方を受け入れるのだ」。
9:38 ヨハネが彼に言った,「先生,わたしたちは,わたしたちに従っていない人があなたの名において悪霊たちを追い出しているのを見ました。それでわたしたちは,彼がわたしたちに従っていないので,彼をとどめました」。
9:39 しかしイエスは言った,「彼をとどめてはいけない。わたしの名において強力な業を行なおうとする者で,すぐさまわたしを悪く言うことができる者はいないからだ。 9:40 わたしたちに逆らわない者は,わたしたちの味方なのだ。 9:41 あなた方がキリストのものであるという理由で,わたしの名のゆえにあなた方に一杯の水を与える者については,本当にはっきりとあなた方に告げるが,彼はその報いを決して失わないだろう。 9:42 わたしを信じるこれら小さな者たちの一人をつまずかせる者は,首に臼
10:1 彼はそこから立って,ユダヤ地方とヨルダンの向こうに入った。群衆がまた彼のもとに集まって来た。彼は再びいつものように彼らを教えていた。 10:2 ファリサイ人たちが彼を試そうとしてやって来て,彼に尋ねた,「男が自分の妻を離縁することは許されているのですか」。
10:3 彼は答えた,「モーセはあなた方に何と命じたか」。
10:4 彼らは言った,「モーセは,離縁状を書いて妻を離縁することを許しました」。
10:5 しかしイエスは彼らに言った,「彼は,あなた方の心のかたくなさのゆえに,あなた方にこのおきてを書いたのだ。 10:6 だが,創造のはじめから,『神は彼らを男性と女性に造られた。 10:7 このために,男は自分の父と母を離れて,自分の妻と結び付く。 10:8 こうして二人は一体となる』。それで,彼らはもはや二つではなく,一体なのだ。 10:9 だから,神が結ばれたものを,人が離してはいけない」。
10:10 家の中で,弟子たちはこの問題について再び彼に尋ねた。 10:11 彼は彼らに言った,「自分の妻を離縁して別の女と結婚する者は,彼女に対して姦淫
10:13 彼に触ってもらおうとして,人々は幼子たちを彼のもとに連れて来ていたが,弟子たちは,幼子たちを連れて来ていた者たちをしかりつけた。 10:14 しかしイエスは,それを見て憤りに動かされ,彼らに言った,「幼子たちがわたしのところに来るままにしておきなさい! 彼らをとどめてはいけない。神の王国はこのような者たちのものだからだ。 10:15 本当にはっきりとあなた方に告げる。神の王国を幼子のように受け入れない者は,決してその中に入ることはない」。 10:16 彼らを両腕に抱き寄せ,その上に両手を置いて彼らを祝福した。
10:17 彼が道に出て行くと,ある人が走り寄って来てその前にひざまずき,彼に尋ねた,「善い先生,永遠の命を受け継ぐためには何をしたらよいでしょうか」。
10:18 イエスは彼に言った,「なぜ,わたしのことを善いと呼ぶのか。神おひとりのほかに善い者はいない。 10:19 あなたはおきてを知っている。『殺してはいけない』,『姦淫
10:20 彼はイエスに言った,「先生,わたしはそうした事すべてを幼いころから守ってきました」。
10:21 イエスは彼を見つめながら,彼を愛した。そして彼に言った,「あなたには一つのことが足りない。自分の持ち物をみな売って,貧しい人々に与えなさい。そうすれば,天に宝を持つことになる。それから来て,十字架を取り上げてわたしに従いなさい」。
10:22 しかし,彼はこの言葉で顔を曇らせ,悲嘆にくれながら去って行った。多くの資産を持っていたからである。 10:23 イエスはあたりを見回して,弟子たちに言った,「富のある者たちが神の王国に入るのは,何と難しいことか!」
10:24 弟子たちは彼の言葉に驚いた。しかしイエスは再び答えた, 「子供たちよ,富を信頼する者たちが神の王国に入るのは何と難しいことか! 10:25 富んだ人が神の王国に入るよりは,*ラクダが針の穴を通り抜ける方が易しいのだ」。
10:26 彼らは非常に驚いて,彼に言った,「それでは,だれが救いを得られるのですか」。
10:27 イエスは彼らを見つめて言った,「人には不可能だが,神にはそうではない。神にはすべての事が可能だからだ」。
10:28 ペトロが彼に言い始めた,「ご覧ください,わたしたちは何もかも後にして,あなたに従ってきました」。
10:29 イエスは言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。わたしのため,また福音のために,家,兄弟たち,姉妹たち,父,母,妻,子供たち,あるいは畑を後にする者で, 10:30 今この時に百倍の家々,兄弟たち,姉妹たち,母たち,子供たち,そして畑を,迫害と共に受け,また来たるべき時代で永遠の命を受けない者はいない。 10:31 だが,多くの最初の者が最後に,最後の者が最初になるだろう」。
10:32 彼らはエルサレムに上って行く途上にあった。そして,イエスが彼らの前を進んで行くので,彼らは驚き,従う者たちは恐れた。彼は再び十二人をわきに連れて行き,自分に起ころうとしている事柄を彼らに告げ始めた。 10:33 「見よ,わたしたちはエルサレムに上って行く。人の子は祭司長たちや律法学者たちに引き渡される。彼らは彼を死に定めて異邦人たちに引き渡すだろう。 10:34 彼らは彼をあざけり,つばをかけ,むち打ち,殺すだろう。三日目に彼は生き返る」。
10:35 ゼベダイの子らのヤコブとヨハネが彼のそばに来て言った,「先生,わたしたちがお願いすることを何でもしていただきたいのですが」。
10:36 彼は彼らに言った,「何をして欲しいのか」。
10:37 彼らは彼に言った,「あなたの栄光の中で,わたしたちが,一人はあなたの右に,一人はあなたの左に座ることをお許しください」。
10:38 しかしイエスは彼らに言った,「あなた方は自分が何を求めているかを知っていない。あなた方は,わたしの飲む杯を飲み,わたしの受けているバプテスマを受けることができるか」。
10:39 彼らは彼に言った,「できます」。
イエスは彼らに言った,「確かに,あなた方はわたしの飲む杯を飲み,わたしの受けているバプテスマを受けるだろう。 10:40 だが,わたしの右や左に座ることは,わたしが与えるものではなく,それが備えられている人たちのためのものだ」。
10:41 ほかの十人はこれを聞き,ヤコブとヨハネに対して憤慨し始めた。
10:42 イエスは彼らを呼び寄せてこう言った。「あなた方が知っているとおり,異邦人たちを治める支配者と見なされている者たちは,人々に対して威張り散らし,偉い人たちは人々の上に権力を行使している。 10:43 だが,あなた方の間ではそうであってはならない。むしろ,あなた方の間で偉くなりたいと思う者は,あなた方の召使いでなければいけない。 10:44 だれでもあなた方の間で第一になりたい者は,みんなの奴隷でなければいけない。 10:45 というのは,人の子も,仕えてもらうためではなく,むしろ仕え,自分の命を多くの人の身代金として与えるために来たからだ」。
10:46 彼らはエリコにやって来た。彼が弟子たちや大群衆と共にエリコから出て来ると,ティマイオスの子で,バルティマイオスという目の見えないこじきが,道ばたに座っていた。 10:47 彼は,それがナザレ人イエスだと聞くと,「ダビデの子イエスよ,わたしをあわれんでください!」と大声で叫び出した。 10:48 大勢の人が,静かにするようしかりつけたが,彼はますます,「ダビデの子イエスよ,わたしをあわれんでください!」と叫び続けた。
10:49 イエスは立ち止まって,「彼を呼びなさい」と言った。
人々は盲人を呼んで,彼に言った,「元気を出せ! 立ち上がれ。あなたをお呼びだ!」
10:50 彼は外衣を投げ捨てて躍り上がり,イエスのもとにやって来た。
10:51 イエスは彼に尋ねた,「何をして欲しいのか」。
盲人はイエスに言った,「ラボニ,また見えるようにしてください」。
10:52 イエスは彼に言った,「行きなさい。あなたの信仰があなたをよくならせた」。すぐに彼は見えるようになり,道すがらイエスに従った。
11:1 彼らがエルサレムに,つまりオリーブ山のふもとのベツファゲとベタニアに近づいた時,彼は弟子たちのうちの二人を遣わして 11:2 彼らに言った,「向こうの村に行きなさい。そこに入るとすぐに,だれも乗ったことのない子ロバがつないであるのが見つかるだろう。それを解いて,連れて来なさい。 11:3 もしだれかが,『なぜこんなことをしているのか』と尋ねるなら,『主がこれを必要としているのです。そして,すぐにここに送り返されるでしょう』と言いなさい」。
11:4 彼らは出て行き,表通りに面した外の戸口に子ロバがつないであるのを見つけて,それを解いた。 11:5 そこに立っていた者たちのうちの数人が彼らに尋ねた,「その子ロバを解いたりして,何をしているのだ」。 11:6 イエスの言ったとおりに言うと,その者たちは行かせてくれた。
11:7 その子ロバをイエスのもとに連れて来て,その上に自分たちの外衣を投げかけた。するとイエスはそれに乗った。 11:8 大勢の人が自分たちの外衣を道に敷き,またほかの者たちは木から枝を切り落として来て街道に敷いていた。 11:9 先に行く者も付いて行く者も,叫んで言った,「ホサンナ! 主の名において来る者は幸いだ! 11:10 主の名において来ようとしている我らの父ダビデの王国は幸いだ! いと高き所にホサンナ!」
11:11 イエスはエルサレムで神殿に入った。あらゆるものを見回してから,もう夕方になっていたので,十二人と共にベタニアに出て行った。
11:12 その次の日,彼らがベタニアから出て来た時,彼は空腹を感じた。 11:13 はるか遠くでイチジクの木が葉をつけているのを見て,そこに何か見つかるかも知れないと見に行った。そこに来てみると,葉のほかには何も見つからなかった。イチジクの季節ではなかったからである。 11:14 イエスはその木に告げた,「もうだれも,二度とお前から実を食べることがないように!」 そして弟子たちはそれを聞いていた。
11:15 彼らはエルサレムにやって来た。そしてイエスは神殿に入り,神殿で売り買いしていた者たちを追い出し始め,両替人たちの台とハトを売る者たちの腰掛けをひっくり返した。 11:16 だれにも神殿を通って器物を運ぶことを許さなかった。 11:17 彼は教えて,彼らに言った,「『わたしの家はあらゆる民族のための祈りの家と呼ばれるだろう』と書かれていないだろうか。それなのにあなた方は,それを強盗たちの巣にしてしまった!」
11:18 祭司長たちと律法学者たちはこれを聞いて,どうやって彼を滅ぼそうかと探り求めた。というのは,群衆がみなその教えに驚いていたので,彼らは彼を恐れていたからである。
11:19 夕方になった時,彼は都から出て行った。 11:20 朝早く,通りすがりに,彼らはあのイチジクの木が根もとから枯れているのを目にした。 11:21 ペトロは思い出して彼に言った,「ラビ,ご覧ください! あなたがのろわれたあのイチジクの木は枯れてしまいました」。
11:22 イエスは彼らに答えた,「神に信仰を持ちなさい。 11:23 本当にはっきりとあなた方に告げるが,だれでもこの山に『持ち上げられて海の中に投げ込まれるように』と言って,心の中で疑わず,自分の言っていることは起きるのだと信じる者は,自分の言っていることを得ることになるからだ。 11:24 だからあなた方に告げる。あなた方が祈りかつ求めるものは何でも,それを受けるのだと信じなさい。そうすればそれを得ることになる。 11:25 あなた方が立って祈る時に,だれかに対して恨み事があるなら,それを許しなさい。そうすれば,天におられるあなた方の父もあなた方の違反を許してくださるだろう。 11:26 だが,もし許さないなら,あなた方の天の父も,あなた方の違反を許してくださらないだろう」。
11:27 彼らは再びエルサレムにやって来た。そして彼が神殿の中を歩いていると,祭司長たちや律法学者たちや長老たちが彼のもとにやって来た。 11:28 そして彼らは彼にこう言い始めた。「あなたは何の権威によってこうした事をするのか。また,だれがこうした事をするその権威をあなたに与えたのか」。
11:29 イエスは彼らに言った,「あなた方に一つのことを尋ねよう。わたしに答えなさい,そうすれば,何の権威によってこうした事をするのかをあなた方に告げよう。 11:30 ヨハネのバプテスマは天からのものだったか,それとも人からのものだったか。わたしに答えなさい」。
11:31 彼らは互いに論じ合って言った,「我々が『天から』と言えば,彼は『あなた方が彼を信じなかったのはなぜか』と言うだろう。 11:32 我々が『人から』と言えば」―彼らは民を恐れた。みんながヨハネは実際に預言者だったと考えていたからである。 11:33 彼らはイエスに答えた,「わたしたちは知らない」。
イエスは彼らに言った,「わたしも,何の権威によってこうした事をするのかをあなた方に告げない」。
12:1 たとえで彼らに語り始めた。「ある人がブドウ園を造り,その周りに垣根を巡らし,ブドウ搾り場の穴を掘り,塔を建て,それを耕作人に貸して,外国に出かけた。 12:2 時が来ると,彼は召使いを耕作人のところに送って,耕作人からブドウ園の産物の分け前を得ようとした。 12:3 彼らはその召使いを捕まえて打ちたたき,何も持たせずに送り返した。 12:4 主人は再び別の召使いを彼らのところに送ったが,彼らはその召使いに石を投げつけ,頭に傷を負わせ,ひどい扱いをして送り返した。 12:5 主人は再び別の者を遣わしたが,彼らはこれを殺した。そしてほかの大勢の者たちを,ある者は打ちたたき,ある者は殺した。 12:6 それで,彼にはもう一人,彼の愛する息子がいたが,『わたしの息子なら敬うだろう』と言って,最後にこの者を彼らに送った。 12:7 ところがそれらの耕作人たちは互いに言った,『これは相続人だ。さあ,こいつを殺そう。そうすれば,相続財産は我々の物になるのだ』。 12:8 彼らは彼を捕まえて殺し,そのブドウ園の外に投げ出した。 12:9 それで,ブドウ園の主人はどうするだろうか。やって来て耕作人たちを滅ぼし,そのブドウ園をほかの者たちに与えるだろう。 12:10 あなた方はこの聖句を読んだことがないのか。
『建てる者たちが退けた石,
12:11 これは主から生じたことで,
それが隅の親石となった。
わたしたちの目には不思議なことだ』」。
12:12 彼らは,このたとえが自分たちに当てつけて話されたことに気づいたので,彼を捕まえようとしたが,群衆を恐れた。彼らは彼を残して立ち去った。 12:13 彼らはファリサイ人たちとヘロデ党の者たちのある者たちを彼のもとに遣わした。言葉によって彼を陥れようとしてであった。 12:14 やって来て,彼に言った,「先生,わたしたちはあなたが正直な方で,だれにも妥協なさらないことを知っています。あなたはだれをもえこひいきすることなく,神の道を正しく教えられるからです。カエサルに税金を払うことは許されているでしょうか,許されていないでしょうか 12:15 支払うべきでしょうか,支払ってはいけないでしょうか」。
しかし彼は,彼らの偽善を見抜いて,彼らに言った,「なぜあなた方はわたしを試すのか。一デナリオスを持って来て,それをわたしに見せなさい」。
12:16 彼らはそれを持って来た。
彼は彼らに言った,「これはだれの像と銘なのか」。
彼らは彼に言った,「カエサルのです」。
12:17 イエスは彼らに答えた,「カエサルのものはカエサルに,神のものは神に返しなさい」。
彼らは彼のことで大いに驚嘆した。
12:18 サドカイ人たちが彼のもとにやって来た。復活などはないと言う者たちである。彼に尋ねて言った, 12:19 「先生,モーセはわたしたちに,『もしある人の兄が死に,妻を後に残したが子供を残さなかった場合には,彼の弟がその妻をめとり,自分の兄のために子孫を起こさなければならない』と書きました。 12:20 七人の兄弟がいました。最初の者が妻をめとりましたが,子孫を残さずに死にました。 12:21 二番目の者が彼女をめとりましたが,子供を後に残さずに死にました。三番目の者も同様でした。 12:22 そして,七人が彼女をめとりましたが,子供を残しませんでした。みんなの最後にその女も死にました。 12:23 復活において,彼らが生き返る時,彼女は彼らのうちのだれの妻になるのですか。七人が彼女を妻としたのですから」。
12:24 イエスは彼らに答えた,「あなた方が思い違いをしているのは,聖書も神の力も知っていないからではないか。 12:25 死んだ者たちの中から生き返る時には,彼らはめとったり嫁いだりせず,天のみ使いたちのようになるからだ。 12:26 だが,死んだ者たちについて,つまり彼らが起こされることについて,あなた方はモーセの書の『茂み』のくだりで,神が彼にどのように語られたかを読んだことがないのか。『わたしはアブラハムの神,イサクの神,ヤコブの神だ』と言われたのを。 12:27 この方は死んだ者たちの神ではなく,生きている者たちの神なのだ。それで,あなた方は大変な思い違いをしている」。
12:28 律法学者たちの一人が来て,一緒に彼らの議論を聞いていた。イエスが彼らにみごとに答えたのを知って,彼に尋ねた,「すべてのおきてのうち最大のものはどれですか」。
12:29 イエスは答えた,「最大のものはこれだ。『聞け,イスラエルよ,わたしたちの神なる主はただひとりの主である。 12:30 あなたは,心を尽くし,魂を尽くし,思いを尽くし,力を尽くして,あなたの神なる主を愛さなければならない』。これが第一のおきてだ。 12:31 第二はこのようなものだ。『あなたは隣人を自分自身のように愛さなければならない』。これらより大きなおきてはほかにない」。
12:32 その律法学者は彼に言った,「先生,まさしく,主はただおひとりであってほかにはいないとは,よくぞ言われました。 12:33 そして,心を尽くし,理解力を尽くし,魂を尽くし,力を尽くして主を愛すること,また隣人を自分自身のように愛することは,すべての全焼のささげ物や犠牲よりも大切です」。
12:34 イエスは彼が賢く答えたのを見て,彼に言った,「あなたは神の王国から遠くない」。
その後は,イエスにあえて何かを尋ねる者はいなかった。 12:35 神殿で教えていた際,イエスは答えた,「どうして律法学者たちはキリストがダビデの子だと言うのか。 12:36 ダビデ自身,聖霊によってこう言ったのだ。
『主はわたしの主に言われた,
12:37 それで,ダビデ自身が彼を主と呼んでいるのなら,どうして彼はダビデの子であり得るのか」
「わたしの右に座っていなさい,
わたしがあなたの敵たちをあなたの足台とするまで」』。
民衆は彼の言うことを喜んで聞いていた。 12:38 彼はその教えの中で彼らに言った,「律法学者たちに用心しなさい。彼らが好むのは,長い衣をまとって歩き回ることや,市場であいさつされること, 12:39 そして会堂での上席や祝宴での上座だ。 12:40 彼らは,やもめたちの家々を食い物にし,見せかけのために長い祈りをする者たちだ。こうした者たちはは最も厳しい裁きを受けるだろう」。
12:41 イエスは宝物庫に向かい合って座り,群衆がお金を投げ入れる様子を見ていた。大勢の富んだ人たちがたくさん投げ入れていた。 12:42 一人の貧しいやもめがやって来て,小さな真ちゅうの硬貨二つを投げ入れた。これは一クァドランス硬貨に相当する。 12:43 彼は弟子たちを自分のところに呼んで,彼らに言った,「本当にはっきりとあなた方に言う。この貧しいやもめは,宝物庫に差し出しているすべての人たちよりも多くを差し出したのだ。 12:44 彼らはみな自分のあり余る中から差し出したが,彼女は,その乏しい中から,彼女が生活のために持っていたものすべてを差し出したからだ」。
13:1 彼が神殿から出て行く時,弟子たちの一人が彼に言った,「先生,ご覧ください,何という石,何という建物でしょう!」
13:2 イエスは彼に言った,「これらの大きな建物を見ているのか。ここで石が崩されずにほかの石の上に残ることはないだろう」。
13:3 彼がオリーブ山で神殿に向かって座っていた時,ペトロ,ヤコブ,ヨハネ,アンデレが,ひそかに尋ねた, 13:4 「わたしたちに教えてください。それらのことはいつ起きるのですか。それらのことがすべて果たされるというしるしは何ですか」。
13:5 イエスは答えて,彼らにこう告げ始めた。「だれもあなた方を惑わすことがないように注意しなさい。 13:6 多くの者がわたしの名においてやって来て,『わたしがその者だ!』と言って,多くの者を惑わすだろう。
13:7 「戦争のことや戦争のうわさを聞く時,動転してはいけない。これらのことは起こらなければならないが,終わりはまだなのだ。 13:8 民族は民族に,王国は王国に敵対して立ち上がるからだ。あちこちで地震がある。ききんと混乱がある。これらは産みの苦しみの始まりだ。 13:9 だが,自分自身を見張っていなさい。というのは,人々はあなた方を地方法廷に引き渡すだろう。あなた方は会堂で打ちたたかれる。あなた方はわたしのために支配者たちや王たちの前に立つことになる。彼らに対する証言のためだ。 13:10 福音がまず,あらゆる民族に宣教されなければならない。 13:11 人々があなた方を連行して引き渡す時,あらかじめ思い煩ったり,何を言おうかと前もって考えたりしてはいけない。むしろ,その時にあなた方に与えられることを言いなさい。語っているのはあなた方ではなく,聖霊なのだ。
13:12 「兄弟は兄弟を,父は子供を死に引き渡すだろう。子供たちは両親に敵対して立ち上がり,彼らを死に至らせるだろう。 13:13 あなた方はわたしの名のためにすべての者たちから憎まれるだろう。だが,最後まで耐え忍ぶ者,その者が救われるだろう。 13:14 だが,預言者ダニエルによって語られた,荒廃させる嫌悪すべきものが,立ってはならない所に立っているのを見るなら(読者は理解せよ),その時,ユダヤにいる者たちは山に逃げなさい。 13:15 また,屋上にいる者は降りてはならず,自分の家から何かを取り出そうとして中に入ってもいけない。 13:16 畑にいる者は外衣を取りに戻ってはいけない。 13:17 だが,それらの日,妊娠している者たちと赤子に乳を飲ませている者たちにとっては災いだ! 13:18 あなた方の逃走が冬に起こらないように祈っていなさい。 13:19 それらの日には,神が造られた創造物のはじめから今に至るまで起きたことがなく,また二度と起きないような苦しみがあるからだ。 13:20 主がその日々を短くされなかったなら,肉なる者はだれも救われないだろう。だが,ご自分が選び出されたその選ばれた者たちのために,主はその日々を短くされたのだ。 13:21 その時,だれかがあなた方に,『見よ,ここにキリストがいる!』とか,『見よ,あそこだ!』などと告げても,それを信じてはいけない。 13:22 偽キリストたちや偽預言者たちが現われて,できるなら選ばれた者たちをさえ惑わそうとして,しるしと不思議な業を行なうからだ。 13:23 けれども,あなた方は気を付けていなさい。
「見よ,わたしはあなた方にすべてのことをあらかじめ告げている。 13:24 だが,それらの日,その苦しみの後に,太陽は暗くなり,月は光を放たなくなり, 13:25 星々は天から落ち,天にあるもろもろの力は揺り動かされるだろう。 13:26 その時,人々は,人の子が大いなる力と栄光を伴って雲のうちに来るのを見るだろう。 13:27 その時,彼は自分のみ使いたちを遣わし,四方の風から,地の果てから天の果てまで,自分の選ばれた者たちを集め寄せるだろう。
13:28 「さあ,イチジクの木からこのたとえを学びなさい。その枝が柔らかくなり,葉を出すと,あなた方は夏の近いことを知る。 13:29 そのようにあなた方も,これらのことが起こるのを見たなら,彼が戸口にまで近づいていることを知りなさい。 13:30 本当にはっきりとあなた方に告げる。これらのすべてのことが起きるまでは,この世代は過ぎ去らない。 13:31 天と地は過ぎ去るだろう。それでも,わたしの言葉は過ぎ去らないのだ。 13:32 だが,その日やその時刻についてはだれも知らない。天のみ使いたちも子も知らず,ただ父だけが知っておられる。 13:33 見張っていて,警戒し続け,祈っていなさい。あなた方はその時がいつかを知らないからだ。
13:34 「それは,自分の家を離れて,自分の召使いたちにそれぞれ仕事を託して権威を与え,門番にも見張り続けるよう命じて,外国に旅行する人のようなものだ。 13:35 だから見張っていなさい。家の主人がいつ来るか,夕方か,真夜中か,おんどりの鳴くころか,早朝かを,あなた方は知らないのだから。 13:36 主人が突然やって来て,あなた方の眠っているところを見つけるようなことのないためだ。 13:37 わたしがあなた方に告げることは,すべての者に告げるのだ。見張っていなさい」
14:1 さて,過ぎ越しと種なしパンの祭りの二日前になった。そこで祭司長たちと律法学者たちは,どうしたら策略によって彼を捕まえて殺すことができるかを探り求めていた。 14:2 というのは,彼らはこう言っていたからである。「祭りの間はいけない。民の暴動が起きるかも知れないからだ」。
14:3 彼がベタニアでらい病の人シモンの家にいた時,食卓に着いていると,一人の女が,非常に高価な純正のナルド香油の入った雪花石こうのつぼを持ってやって来た。つぼを砕き,それを彼の頭に注いだ。 14:4 しかし,互いに憤慨した者が数人いて,こう言った。「なぜその香油を無駄にしたのか。 14:5 この香油なら三百デナリ以上で売れたし,そうすれば貧しい人々に施すことができたのに」。彼らはその女に対して不平を言った。
14:6 しかしイエスは言った,「彼女をそのままにしておきなさい。なぜあなた方は彼女を悩ませるのか。彼女はわたしに良い行ないをしてくれたのだ。 14:7 あなた方には,貧しい人々はいつでも一緒にいて,いつでも望む時に彼らに良いことができる。だが,わたしはいつでもいるわけではないからだ。 14:8 彼女は自分にできることをした。埋葬に備えてわたしの体に前もって油を塗ってくれたのだ。 14:9 本当にはっきりとあなた方に告げる。世界中どこでも,この福音が宣教される所では,この女の行なったこともまた,彼女の記念として語られるだろう」。
14:10 十二人の一人,ユダ・イスカリオトは,彼を引き渡すために,祭司長たちのところに出て行った。 14:11 彼らはそれを聞いて喜び,彼にお金を与えることを約束した。彼はどうすればイエスをうまく引き渡せるかを探り求めた。 14:12 種なしパンの最初の日,つまり過ぎ越しの犠牲をささげる日,弟子たちが彼に尋ねた,「過ぎ越しの食事をなさるのに,わたしたちがどこに行って用意をすることをお望みですか」。
14:13 彼は弟子たちのうちの二人を遣わして,彼らに言った,「市内に入りなさい。するとあなた方は水がめを運んでいる男に出会うだろう。その人に付いて行きなさい。 14:14 そして,彼が入っていく所で,その家の主人にこう言いなさい。『先生が,「わたしが弟子たちと共に過ぎ越しの食事をする客室はどこか」と言っています』。 14:15 彼はあなた方に,席が備えられて用意のできている大きな階上の部屋を見せてくれるだろう。その場所でわたしたちのために用意をしなさい」。
14:16 弟子たちは出て行って,市内に入り,彼が自分たちに言ったとおりのことを見いだした。それで彼らは過ぎ越しの用意をした。
14:17 夕方になった時,彼は十二人と一緒にやって来た。 14:18 彼らが席に着いて食事をしていると,イエスは言った,「本当にはっきりとあなた方に告げる。あなた方の一人で,わたしと一緒に食事をしている者が,わたしを売り渡すだろう」。
14:19 彼らは悲しみ始め,一人ずつ彼に「まさかわたしではないでしょうね」と尋ね始めた。そして互いに「まさかわたしではないだろうな」と言い合った。
14:20 彼は彼らに答えた,「それは十二人の一人で,わたしと共に食べ物を鉢に浸している者だ。 14:21 人の子は自分について書いてあるとおりに去って行くからだ。だが,人の子を売り渡すその者は災いだ! 生まれて来なかった方が,その者のためには良かっただろう」。
14:22 彼らが食事をしていると,イエスはパンを取り,祝福してからそれを裂き,彼らに与えてこう言った。「取って,食べなさい。これはわたしの体だ」。
14:23 杯を取り,感謝をささげてから,彼らに与えた。彼らは皆その杯から飲んだ。 14:24 彼は彼らに言った,「これは新しい契約のためのわたしの血だ。それは多くの人のために注ぎ出されるのだ。 14:25 本当にはっきりとあなた方に告げる。神の王国においてそれを新たに飲むその日まで,わたしはもはやブドウの木の産物を飲むことはない」。 14:26 賛美の歌を歌ってから,彼らはオリーブ山へと出て行った。
14:27 イエスは彼らに言った,「今夜,あなた方全員がわたしのためにつまずくだろう。『わたしは羊飼いを打つ。すると羊は散らされるだろう』と書いてあるからだ。 14:28 だが,わたしは起こされた後,あなた方より先にガリラヤに行くだろう」。
14:29 しかしペトロは彼に言った,「みんなが背いても,わたしは背きません」。
14:30 イエスは彼に言った,「本当にはっきりとあなたに告げる。今日,それも今夜,おんどりが二度鳴く前に,あなたは三度わたしを否認するだろう」。
14:31 しかし彼はますます言い立てた,「あなたと一緒に死ななければならないとしても,わたしはあなたを否認しません」。彼らは皆,同じ事を言った。
14:32 彼らはゲツセマネという名の場所にやって来た。彼は弟子たちに言った,「わたしが祈っている間,ここに座っていなさい」。 14:33 彼はペトロとヤコブとヨハネを伴って行ったが,ひどく心配し,苦悩し始めた。 14:34 彼らに言った,「わたしの魂は死ぬほどに深く悲しんでいる。ここにとどまって,見張っていなさい」。
14:35 少し進んで行って地面にひれ伏し,もしできることなら,その時が自分から過ぎ去るようにと祈った。 14:36 彼は言った,「アッバ,父よ,あなたにはすべてのことがおできになります。この杯をわたしから取り除いてください。それでも,わたしの望むことではなく,あなたの望まれることを」。
14:37 やって来て,彼らが眠っているのを見つけて,ペトロに言った,「シモンよ,眠っているのか。一時間も見張っていられなかったのか。 14:38 あなた方は誘惑に陥らないよう,見張って,祈っていなさい。霊はその気でも,肉体は弱いのだ」。
14:39 再び離れて行き,同じ言葉で祈った。 14:40 もう一度戻って来て,彼らが眠っているのを見つけた。彼らの目は非常に重くなっていたのである。そして彼らは,彼に何と答えたらよいか分からなかった。 14:41 彼は三度目にやって来て,彼らに言った,「なお眠って,休息をとりなさい。もう十分だ。時が来た。見よ,人の子は罪人たちの手に売り渡される。 14:42 立ちなさい,さあ行こう。見よ,わたしを売り渡す者が近づいて来た」。
14:43 すぐに,彼がまだ話しているうちに,十二人の一人のユダがやって来た。そして彼と共に,祭司長たちと律法学者たちと長老たちのもとから来た群衆が,剣やこん棒を手にしてやって来た。 14:44 さて,イエスを売り渡した者は,「わたしが口づけするのがその者だ。それを捕まえて,しっかりと引いて行け」と言って,彼らに合図を伝えていた。 14:45 やって来ると,すぐにイエスに近寄り,「ラビ! ラビ!」と言って,口づけした。 14:46 彼らはイエスに手をかけて捕まえた。 14:47 しかし,立っていた者の一人が剣を抜いて,大祭司の召使いに撃ちかかり,その片耳を切り落とした。
14:48 イエスは彼らに答えた,「あなた方は強盗に対するかのように,剣とこん棒を持ってわたしを捕まえに出て来たのか。 14:49 わたしは毎日あなた方と一緒に神殿にいて教えていたのに,あなた方はわたしを逮捕しなかった。だが,これは聖句が果たされるためなのだ」。
14:50 弟子たちは皆,彼を残して逃げて行った。 14:51 ある若者が,裸の体に亜麻布をまとって,イエスに付いて行った。若者たちは彼を捕まえようとしたが, 14:52 彼は亜麻布を残して,裸のままで逃げて行った。 14:53 彼らはイエスを大祭司のところに引いて行った。祭司長たちと長老たちと律法学者たち全員が集まって来た。
14:54 ペトロは遠くからイエスに付いて行き,ついに大祭司の中庭に入った。彼は役人たちと共に座っており,たき火で身を暖めていた。 14:55 さて,祭司長たちと最高法院全体は,イエスを死に渡すため,彼に不利な証言を探していたが,何も見つからなかった。 14:56 大勢の者が彼に対して偽りの証言をしたが,それらの証言は互いどうし一致しなかったのである。 14:57 ある者たちが立ち上がり,彼に対して偽りの証言をして,こう言った。 14:58 「わたしたちは,この者が『わたしは手で造ったこの神殿を壊し,手で造られたのではない別のものを三日で建てる』と言うのを聞きました」。 14:59 そのようにしても,彼らの証言は一致しなかった。
14:60 大祭司が真ん中に立ってイエスに尋ねた,「何も答えないのか。これらの者たちがしているお前に不利な証言は何なのだ」。 14:61 しかし彼は黙ったままで,何も答えなかった。再び大祭司は彼に尋ねた,「お前はほめたたえるべき方の子,キリストか」。
14:62 イエスは言った,「わたしはある。あなた方は人の子が力ある方の右に座り,天の雲と共に来るのを見るだろう」。
14:63 大祭司は自分の衣を引き裂いてこう言った。「どうしてこれ以上証人が必要だろうか。 14:64 あなた方は冒とくの言葉を聞いたのだ! あなた方はどう思うか」。みんなは彼を死に値するものと決定した。 14:65 ある者たちは彼につばをかけ,顔を覆ってこぶしで殴り,「預言しろ!」と言い始めた。役人たちも彼を平手で打った。
14:66 ペトロが下の中庭にいると,大祭司の女中の一人がやって来て, 14:67 ペトロが身を暖めているのを見ると,彼を見つめてこう言った。「あなたもナザレ人イエスと一緒にいました!」
14:68 しかし彼はそれを否定して言った,「わたしは知らないし,あなたが何のことを言っているのか分からない」。彼は入り口の方に出て行った。するとおんどりが鳴いた。
14:69 その女中は彼を見て,そばに立っている者たちに再びこう言い始めた。「この人は彼らの一人です」。 14:70 しかし彼は再びそれを否定した。しばらくして,そばに立っている者たちが再びペトロに言った,「確かにあなたは彼らの一人だ。あなたはガリラヤ人で,方言がそれを明かしているからだ」。 14:71 しかし彼はのろったり誓ったりし始めて言った,「わたしはあなた方の話しているその人を知らないのだ!」 14:72 おんどりが二度目に鳴いた。ペトロは,「おんどりが二度鳴く前に,あなたは三度わたしを否認するだろう」とイエスが自分に言った言葉を思い出した。それに思い当たった時,彼は泣き悲しんだ。
15:1 明け方になるとすぐ,祭司長たちは長老たちや律法学者たちと共に,つまり最高法院全体で協議をしてから,イエスを縛って連れ出し,ピラトに引き渡した。 15:2 ピラトは彼に尋ねた,「お前はユダヤ人の王なのか」。
彼は答えた,「あなたがそう言っている」。
15:3 祭司長たちは多くの事について彼を訴えた。 15:4 ピラトは再び彼に尋ねた,「何も答えないのか。彼らがお前に対してどれほど多くの事を証言しているかを見よ」。
15:5 しかしイエスはそれ以上何も答えなかった。そのためピラトは驚いた。
15:6 さて,ピラトは祭りの際に,人々が彼に願い出る囚人を一人,彼らのために釈放するのを慣例としていた。 15:7 バラバと呼ばれる者が,暴動を起こした者たち,暴動において殺人を犯した男たちと共に拘禁されていた。 15:8 群衆が大声で叫んで,自分たちにいつものとおりにして欲しいとピラトに願い始めた。 15:9 ピラトは彼らに答えて言った,「お前たちはユダヤ人の王を釈放して欲しいのか」。 15:10 祭司長たちがねたみのためにイエスを引き渡したことに気づいていたからである。 15:11 しかし祭司長たちは,代わりにバラバを釈放させようとして群衆を扇動した。 15:12 ピラトは再び彼らに答えた,「それでは,お前たちがユダヤ人の王と呼ぶ者はどうしたらよいのか」。
15:13 彼らは再び叫んで言った,「はりつけにしろ!」
15:14 ピラトは彼らに言った,「彼がどんな悪事をしたというのか」。
しかし彼らは激しく叫んで言った,「はりつけにしろ!」
15:15 ピラトは群衆を満足させようと思い,彼らのためにバラバを釈放した。そして,イエスをむち打ってから,はりつけにするために引き渡した。 15:16 兵士たちは彼を邸宅,すなわちプラエトリウムの中に引いて行った。そして全部隊を呼び集めた。 15:17 紫の衣を彼にまとわせ,イバラの冠を編んで彼にかぶせた。 15:18 彼に「ユダヤ人の王様,万歳!」と言ってあいさつをし始めた。 15:19 アシで彼の頭をたたき,ひざをかがめて敬意をささげた。 15:20 彼をなぶりものにした後,彼から紫の衣を脱がせて,もとの衣を着せた。彼らは彼をはりつけにするために引いて行った。 15:21 田舎から出て来た通りがかりの者で,アレクサンデルとルフォスの父であるキュレネのシモンを一緒に来させて,イエスの十字架を運ばせた。 15:22 ゴルゴタ,訳せば「どくろの場所」と呼ばれる場所へ彼を連れて来た。 15:23 彼に飲ませようとして没
15:24 彼をはりつけにしてから,だれが何を取るかくじを引いて,互いにその外衣を分けた。 15:25 時は第三時であり,彼らは彼をはりつけにした。 15:26 彼の上には「ユダヤ人の王」という罪状書きが記されていた。 15:27 彼と共に二人の強盗をはりつけにし,一人はその右に,一人はその左に置いた。 15:28 こうして,「彼は罪人たちと共に数えられた」と言う聖句が果たされた。
15:29 通りかかった者たちは,頭を振りながら彼を冒とくして言った,「へえ! 神殿を壊して三日で建てる者よ, 15:30 十字架から降りて来て自分を救ってみろ!」
15:31 同じように,祭司長たちも律法学者たちと一緒になって,代わる代わるあざけって言った,「ほかの者たちは救ったが,自分は救えないのだ。 15:32 キリスト,イスラエルの王よ,さあ,十字架から降りて来るがよい。そうしたらそれを見て信じよう」。一緒にはりつけになっていた者たちも,彼を侮辱した。
15:33 第六時になると闇が全土を覆い,第九時にまで及んだ。 15:34 第九時に,イエスは大声で叫んで,「エロイ,エロイ,ラマ,サバクタニ」と言った。これは,訳せば,「わたしの神,わたしの神,なぜわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
15:35 そばに立っていた者たちの何人かは,それを聞いて,「見ろ,エリヤを呼んでいるのだ」と言った。
15:36 ある者が走って行き,海綿に酢をたっぷり含ませて,アシの先に付け,それを彼に飲まそうとして,「彼をそのままにしておけ。エリヤが彼を降ろしに来るかどうかを見よう」と言った。
15:37 イエスは大声で叫んで,自分の霊を引き渡した。 15:38 神殿の幕が上から下まで二つに裂けた。 15:39 彼に向かい合って立っていた百人隊長は,彼がこのように叫んで息を引き取ったのを見て,「本当にこの人は神の子だった!」と言った。
15:40 女たちも遠くから見ていたが,その中にはマリア・マグダレネ,小ヤコブとヨセの母マリア,それにサロメがいた。 15:41 これらは,彼がガリラヤにいた時,彼に従って仕えて者たちであった。そして,彼と共にエルサレムに上って来たほかの大勢の女たちもいた。
15:42 すでに夕方になっていた。準備の日,すなわち安息日の前日だったので, 15:43 最高法院の有力な議員であるアリマタヤのヨセフがやって来た。彼自身も神の王国を待ち望んでいた。思い切ってピラトのところへ行き,イエスの体を渡してくれるようにと願い出た。 15:44 ピラトは,彼がもう死んだのだろうかと不思議に思い,百人隊長を呼び寄せて,彼がもはや死んでしまったのかどうかを尋ねた。 15:45 百人隊長から確かめると,ピラトは死体をヨセフに与えた。 15:46 彼は亜麻布を買い,イエスを取り降ろして亜麻布に包み,岩に切り掘ってあった墓に横たえた。墓の入り口に石を転がしておいた。 15:47 マリア・マグダレネとヨセの母マリアは,イエスの横たえられた場所を見ていた。
16:1 安息日が過ぎた時,マリア・マグダレネ,ヤコブの母マリア,それにサロメは,行って彼に油を塗ろうとして香料を買った。 16:2 週の初めの日,非常に朝早く,日の昇るころ,彼女たちは墓にやって来た。 16:3 彼女たちは,「だれがわたしたちのために墓の入り口から石を転がしてくれるでしょう」と互いに言い合っていた。 16:4 その石は非常に大きかったからである。彼女たちが目を上げると,石が転がしてあるのが見えた。
16:5 墓の中に入ると,彼女たちは,白い衣を着た一人の若者が右側に座っているのを見て,ひどく驚いた。 16:6 若者は彼女たちに言った,「驚いてはいけない。あなた方ははりつけにされたナザレ人イエスを探している。彼は起こされた。ここにはいない。見よ,ここが彼の横たえられた場所だ! 16:7 だが,行って,彼の弟子たちとペトロに,『彼はあなた方より先にガリラヤへ行く。彼があなた方に言われたとおりに,あなた方はそこで彼を見るだろう』と告げなさい」。
16:8 彼女たちは*出て行き,墓から逃げ出した。わななきと驚きが彼女たちの上に生じていたからである。彼女たちはだれにも,何も言わなかった。恐ろしかったからである。 16:9 さて,彼は週の初めの日の朝早くに起こされると,まずマリア・マグダレネに現われた。この彼女からは七つの悪霊を追い出したことがあった。 16:10 彼女は行って,彼と共にいた者たちに告げたが,彼らは泣き悲しんでいるところであった。 16:11 彼が生きていて彼女に現われたと聞いても,彼らは信じなかった。 16:12 こうした事ののち,彼らのうちの二人が田舎に向かって歩いていると,彼は別の姿で現わされた。 16:13 二人は戻って行って残りの者たちに告げた。彼らはこの二人の言うことも信じなかった。
16:14 その後,彼は食卓に着いていた十一人に現わされて,彼らの不信仰と心のかたくなさをとがめた。生き返った彼を見た者たちの言うことを,彼らが信じなかったからである。 16:15 彼は彼らに言った,「全世界に出て行って,全創造物に福音を宣教しなさい。 16:16 信じてバプテスマを受ける者は救われるが,信じない者は罪に定められるだろう。 16:17 信じる者たちには次のようなしるしが伴うだろう。すなわち,彼らはわたしの名において悪霊たちを追い出し,新しい言語を語り, 16:18 蛇をつかむだろう。また,何か死に至らせる物を飲んでも害を受けず,病気の人たちの上に手を置けば回復するだろう」。
16:19 このようにして,主イエスは,彼らに語った後,天に上げられ,神の右に座った。 16:20 彼らは出て行き,至る所で宣教をした。主は彼らと共に働き,伴うしるしによってみ言葉を強固にした。アーメン。
脚注:
[1] 1:4に戻る パプテスマを施すことは,水(または火)の中に浸す(または浸けて洗う)ことを意味する。このバプテスマは単に肉体を清めるだけでなく,内面の霊的な清めと誓いに関する外面のしるしでもある。
[2] 1:8に戻る ここで「で」と訳されているギリシャ語の単語(en)は,ある文脈においては「と共に」と訳されることもあり得る。
[3] 3:32に戻る TRは「(あなたの)姉妹たち」を省いている
[5] 4:21に戻る 字義,a modion,約1ペック(約9リットル)入りの穀物の計量かご
[6] 6:33に戻る TRは「人々」の代わりに「群衆」と読んでいる
[7] 6:37に戻る 200デナリは農業労務者のおよそ7ないし8か月分の賃金。
[10] 7:11に戻る コルバンは神に献納されたささげ物を表わすヘブライ語
[11] 8:12に戻る ここで「世代」と訳された言葉(genea)は,「人々」,「種族」,または「一家」と訳すこともできる。
[12] 9:43に戻る ゲヘナは,場所の名前に由来する地獄を表す単語。その場所で,生きている赤子が,泣き叫びながら,偶像モレクの腕の下の火の中へ投げ込まれて殺された。廉直なヨシヤ王がこの忌まわしい習慣を廃止した後,この場所は人々によってさげすまれた。ごみの山が築かれただけでなく,病気の動物や刑を執行された犯罪者の死体が投げ込まれ,燃やされた。
[14] 10:51に戻る ラボニは「偉大な先生」を意味するヘブライ語の単語の翻字。
[15] 11:1に戻る TRは「ベツファゲ」の代わりに「ベトファゲ」と読んでいる
[16] 12:42に戻る 字義,レプタ(または,やもめの献金)。レプタは1クァドランスの半分の値打ちの,非常に小さな真ちゅうの硬貨で,1クァドランスはアサリオン銅貨の4分の1の価値。レプタは農業労働者の1日分の賃金の1%の値打ちもない。
[17] 12:42に戻る 1クァドランスは1デナリオスのおよそ64分の1の価値の硬貨。1デナリオスは農業労働者のおよそ1日分の賃金。
[19] 13:30に戻る ここで「世代」と訳された言葉(genea)は,「種族」,「一家」,または「人々」と訳すこともできる。
[20] 14:5に戻る 300デナリは農業労務者のおよそ1年分の賃金。
[22] 15:32に戻る TRは「それ」(him)を省いている
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